袖すりあうも多生の縁 ウオーキングの愉しみ

田んぼの案山子、久しく見なかった




 

ウオーキングを初めて20年以上が過ぎた。

雨の日も風の日も雪の日も、警報などの出る激しい天候でない限りほとんど毎朝、1時間弱歩く。

このウオーキングがきっかけとなり、現在まで、元気で過ごすことができたと思う。

私にとってのウオーキングは朝起きて歯を磨き、顔を洗い食事をするのと同じように日常生活の一部となった。

 

家人は昼は歩く中毒、夜は飲む中毒、アル中の二乗ねと笑う。

 

キバナコスモスの群落、誰が蒔いたのだろう


20年この方、歩く人たちも年々変わっていった。

多分、20年間、変わらずに歩いている人はあまりないように思う。

いずれの時にか私も消えては行くのだが、いつの間にか静かに退場していくのもウオーキング族の生き方としては本望だと思う。

 

ウオーキングをするときの私の基本は、必ず、挨拶を交わすことだ。

にっこり笑って挨拶をしてくれる人、黙ってうなずく人、何も言わずに下を向いて通り過ぎる人、全く無視して前を向いて歩く人、様々だ。

 

でも、今日は、今までに滅多にない体験をした。

まず、今日は10人以上の人とあいさつを交わしたことだ。

その中の3人は時々、挨拶を交わしたり、近況を尋ねたりしてはいたが、3人同じ日に挨拶を交わすことなどなかった。

毎日同じコースをほぼ決まった時刻に歩く人、同じコースを日替わりに順周り、逆回りと変えて歩く人、私のように毎日アトランダムにコースを変える人。

人それぞれだ。



今日の最初は近隣の女性だった。名前は知らない。

「おはようございます。久しぶりですね。」

出会い頭に私の方から言葉をかけた。

彼女はいつも飼い犬のトイプードルを連れている。

「この犬は何歳になるん」と尋ねた。

「もう15歳、主人が生きとったときに飼いだしたから‥‥、

主人はなくなってから10年になる。

それからは私が散歩させている」

と言った。

 

「そんならだいぶ年取っているんじゃなあ」

と言葉を継いだ。

「急によたよたになって、私の後を付いて来るようになってしもうた」

と彼女は嘆いた。

これまであまり長く話したことはなかったが、今日の彼女は饒舌だった。

一人暮らしでおしゃべりを欲しているのだろうと理解して、しばらく一緒に歩きながら、ご主人の病気の話など聞いた。

中秋の名月はピンぼけ



町内を一周する彼女と別れて、遊歩道を歩いていくと、最近親しく言葉を交わすようになった男性がやってきた。

彼は私を確認すると、野球帽を取って丁寧にあいさつした。

私は少し慌てて「そんなにしなくても」と言っておはようございますと返したが、その挨拶には意味があったのだ。

 

一か月ほど前になるだろうか。いつも通る地元の農家の奥さんに挨拶をした。

多分この人も一人暮らし。

もう10年位前から言葉を交わすようになっていた。

彼女が「うちの奥にある社に手を合わせる男の人を知らんかなあ」と尋ねた。

以前、ここの家の前に立って覗いている人を見かけたことがあったことを思い出して、あれは手を合わせていたのかと気が付いた。

「その人なら知っている」と言うと、「彼に会ったら渡したいものがあるので伝えてほしい」と言われ約束した。

 

数日後、同じコースを歩いていたら向こうからくる彼に出会った。

この先の奥さんがあなたに渡したいものがあると言っていたが、わかるかと伝えると、あの奥さんなら話をしたことはあるが、渡したいものということには心当たりがないというので、訪ねてほしいと言っていたと伝えた。

彼女との約束が果たせたことに私は大いに満足した。

 

その後彼には2度ほど、奥さんに会ったのかと聞いてみたが、まだ会えていないと済まなさそうに言った。

3度目に会ったとき、彼は遠くから手を挙げた。

近づいていくと手にポスターを持っていて、

「今日、奥さんに会った。

朝早くから訪ねるのもどうかなと思い、遅くなったけど今日は外に出ていられたので、話をしました。

そして、これをいただいたんです。」

とポスターを開いて見せてくれた。

木食五行作弘法大師座像



それは彼女の家の奥にある社から昨年発見され、市の指定文化財に指定された木造弘法大師座像(木喰五行作)が、県立博物館で今秋展示されるという宣伝ポスターだった。

木喰五行(もくじきごぎょう)については私は全く知らない人だったが、検索してみるとすぐにヒットした。

享保3年(1718年)生まれ22歳で仏門に入り、安永2年56歳の時に諸国巡礼をはじめ、行く先々で仏像を彫刻した。

諸国巡礼の各地に記録が残され、この仏像は寛政10年・1798年の頃の作と市のホームページにあった。

ただ、頼まれた彼女には私はその後、会うことができないでいる。

 

それから1キロくらい歩いたとき、10年来の歩く友がやってきた。

彼は私より2つ3つ大きかったので、もう80歳になるが、背筋をピンと立てて歩く姿や顔の色つやなどとても80翁には見えない。

やはりウオーキングの効果は絶大だなと彼と会うたびに思う。

今日は早いね、遅いねといういつもの挨拶でそれぞれのウオーキングコースに向かった。

 

今日のウオーキングは満足満足。

 

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