二日目、朝4時過ぎに目が覚めた。
昨日は昼から夜までよく飲んだけれど、あまり二日酔いは残っていない。
まず、バスに入って髭をそる。
ゆっくり温まって出たが、ウオーキングに行くにはまだ早いので、ベッドでテレビを見ながらうとうとする。
いつもは5時30分過ぎにはウオーキングに出るのだが、懐中電灯を持ってくるのを忘れたことと、近鉄でICOCAカードの訂正をしてもらうには7時くらいまで待った方がいいと思って7時前にウオーキングに出かけた。
京都駅の地下街、地下道がこんなに広かったのかと初めて知った。
近鉄は京都駅の南側にある。
駅員に事情を話すと、検査機の上にカードを置いて調べてくれた。
改札口での通過処理ができていないと言い、カードでの精算は時間がかかるのでと現金で180円を請求された。これで一件落着。
それから、ウオーキングの際、行くべきコースとして、弟に教えてもらった東本願寺に行く。
東本願寺は大きなお寺、これまではバスの車窓からたくさんの信者や観光客が出入りしている風景を見た記憶があった。
そのことを帰宅してカミさんに話すと、以前一緒に行ったことがあると言われた。
記憶はどんどん消し去られていて、カミさんの話が夢の中のことのように思われた。
カミさんは、明日行くことになっている東本願寺の別邸「渉成園」にもその時行ったと言っていた。
すべては記憶の彼方だ。
ホテルに8時前に帰着した。5000歩ほど歩いていた。
弟に電話すると今朝は8時30分ロビー集合と言った。
エレベータに乗って行く先の4階のボタンを押すが、点灯しない。
2階から最上階の10階まで押してみたが、エレベーターは動かないのだ。
どうなっているのこれ、と少し思案していたら10階が点灯してエレベーターは10階まで昇った。
扉が開くと下に降りるお客が待っていた。
このまま下に降りると意思表示して一緒に乗った。
そして4階のボタンを押したけれどまだ点灯しなかった。
同乗者が、カードキーをそこに当ててと教えてくれた。
4階のボタンが点灯した。私は同乗したお客さんに何度も頭を下げ、ありがとうと言った。
彼は微笑みながらうなずいてくれた。
優しい人だった。
8時30分にロビーに降りていくとエレベーターの前にHちゃんが立っていた。
このエレベーターの操作を知っているかと問うと「知っている」とうなずいた。
「ちょっとやっみて」と二人でエレベーターに乗ったが、想像した通りHちゃんは行く階のボタンを押すだけで、エレベーターは動かない。
「あーやっぱり知らなかったのだ」と納得した。
「ここにカードキーを当てるんだ」と教えて私はエレベーターを降りた。
それから五爺はモーニングを食べに、駅地下に向かった。
地下街への階段を降りてすぐのところに、イノダコーヒーがあった。
ただ、五爺のモーニングとしては、1500円前後のモーニングは高すぎた。
皆、無言で通り過ぎて、少し探してみたが、どこも1000円を超していて、サンドイッチを分けて食べたらということになって再びイノダコーヒーの前に立った。
ミックスサンドを2つ、それぞれコーヒー、紅茶を頼んだ。
サンドイッチに皆あまり手を出さず、残った分は私とBちゃんが平らげた。
モーニング後地下鉄烏丸線で今出川へ。
それから徒歩で京都迎賓館に行く。
今年の幹事は三つ違いの私の弟。
雑誌の編集長をしているだけに、あれこれと綿密な計画を立てる。
迎賓館見学などなかなか思いつかないが、丹念に調べて、インターネットによる事前予約などマメに手続きをしてくれる。
しかし、この迎賓館見学は、我々五爺の目を引き付けて余りあるものがあった。
もとより、平々凡々無芸大食、鯨飲とカラオケを愛する凡爺の面々がしっかり90分間を見学した。
特に、20~30名の見学者を引率するガイドツアーの女性職員の表情豊かで、やさしく行き届いた説明に私は魅了された。
もちろん女性職員の顔はマスクで覆われて、実相を拝見することはできなかったが、上品な顔立ちを連想させた。
やはり、宮内庁の正職員なのだろうか、昔のうまいバスガイドはアナウンサーと歌手や役者を併せ持った人がいたけれど、ここのガイドは、派手さは抑えて、優しく上品さを表出させていて大変好感を持ったのだった。
五爺、みんなの感想が一致していた。
ただ、90分は爺さんには少し長すぎた。
60分くらいが、勉強嫌いで怠け者の爺さん集団には適当だと思った。
今日のランチは幹事によれば町中華とのこと。
このワードは今、テレビ界で氾濫しているが、玉石混淆のたとえ通り、期待外れも多く、一見の客で行ってうまかったという店は少ない。
ということで、中途半端な期待を抱えながら迎賓館から歩いた。
お店の名前は「鳳舞楼」。
歩いて10分ほどだった。
幹事によれば、「鳳舞楼」は昼メニューと夜メニューがあって、昼メニューは少ない。中華で一般的な八宝菜や餃子や五目そばなどもない。
先ずはビールで乾杯。
本家のMちゃんは小さいグラスに半分ほどのビールをなめるようにして飲んでいた。
後期高齢者として、本家の頭領としてだいぶ自重している。
無理もない、飲み過ぎで、吐血、下血などで救急車で運ばれること2回などと体験談を何度か聞いた。
確かに救急車に乗ることも滅多にないのに、2回も運ばれたとはもう無理はできないとお酒の無理強いはやめた。
そんな話をしていたら、Bちゃんが割り込んできた。
自分も救急車を呼んだことがある。
鼻血が大量に出て止まらなくなって救急車を呼んだという。私は五爺の中でもっとも元気なこの男が救急車?と少し違和感を持って聞いていたところ、鼻血と聞いて「鼻血ブーだな」「救急車の乱用だな」と聞きながら、止まらない出血に不安そうに救急車を待つHちゃんの姿を想像して、内心笑いがこみあげていた。
救急車に乗せられて着いた先は耳鼻科医院だった由。
脱脂綿を大量に鼻に押し込められて鼻血は止まった。
救急車は帰って行った。
救急車が大きな病院に運ばなかったことが残念そうだった。
こんな話をそれぞれが次々と提供していたら時間はまたたくまに過ぎていく。
酢豚や麻婆豆腐、しゅうまい、名物からし蕎麦など食べ、私とBちゃんは、さらにビールや焼酎など杯を重ねた。
「鳳舞楼」は期待半ばの町中華だった。(続く)
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