今年の姉弟旅行は湯河原温泉。
私は初めて行く。
といっても姉弟いずれも初めてだと言った。
湯河原温泉のことを東京に住む知人に聞いたけれど、いずれも行ったことがないと言っていた。
新幹線ひかり号は岡山始発で熱海に停車するので乗り換えなしで行ける。
車内で山田村のおむすび3個食べた。
初めて食べたけど美味しかった。
カミさんはサンドイッチ。
岡山を出るときは小雨が降っていたが、大阪・京都は雲の間から日が射していた。
名古屋あたりから雨は強くなった。
熱海に着くと明るい陽射しになっていた。
熱海駅にはすでに長姉、次姉、弟夫婦の4人が待っていてくれた。
長姉は80代後半、次姉は80代前半、私達夫婦は70代後半、弟夫婦は70代前半という構成だ。
姉弟旅行を始めて10年くらいになるが、元気に続いている。
弟が作ってくれた計画では、これからMOA美術館に行く。
熱海駅からタクシーに分乗した。
私の乗ったタクシーの運ちゃんはサービス精神が不足気味で、トランクを開けてはくれたが、キャリーバックの運搬、トランク入れは客任せだった。
運転も慣れた道かも知れないが、急発進、急停車、急カーブでも性急な運転だった。
最近人気を盛り返していると聞いた熱海の鼻息のあらさが出ているのかもしれないと少し興ざめた。
MOA美術館は以前、高校の仲間たちと来たことを思い出した。
入館してから長いエスカレーターで昇って行ったのを覚えていた。
内容は全く記憶していないので、初めての人たちと同じだ。
お昼は美術館敷地内にある
で、ざるそばと桜エビの天ぷら。
桜エビの天ぷらは一皿3枚の天ぷらが付いており、お店の店員のおすすめで、二皿を注文した。
一枚の厚みがあって大きくて、生ビールのあてに食べ、ざるそばのお供にも食べて十分の量があり、熱々でとても美味しかった。
蕎麦の方は私としては若干柔らかめで、香りも少なく、普通だったが、皆さんは美味しいと高評価だった。
タクシー乗り場に行くと客待ちをしているタクシーが一台あった。
運転手の方から
「熱海駅まで、5分ほどだからすぐ戻ってくるよ」
と声をかけてくれた。
「でも、戻ってくるまでに、ほかのタクシーが来たら困るからねえ」と言うと、「それに乗って行っていいよ」とこの運転手は気の利いた親切な言葉だった。
これが観光地の運転手だと、先ほどの運転手とは大違いの態度に印象はいっぺんに変わった。
熱海から湯河原までは電車で一駅だ。
湯河原からは再びタクシーに乗る。
湯河原の運転手は大変人の好い、おしゃべりな年配者だった。
もちろん、重いキャリーバッグもてきぱきとトランクに積んでくれた。
熱海の運転手とは大違いだ。
乗り込むや否や老運転手は湯河原町の衰退ぶりを嘆いた。
「ほとんどシャッター通りよ。」
あの店もこの店もと指しながら旅館に着くまで続いた。
確かに人通りも少なく、活気ない、寂れ切った温泉街だった。
今夜の宿泊旅館伊藤屋は、島崎藤村が定宿にしていたという古い構えの立派な旅館だった。
古いけれど、落ち着きのある、精一杯、古くからの由緒ある旅館を守ろうとする姿勢が見て取れ、好感を持った。
到着してすぐに温泉に入った。
温泉は露天風呂の貸し切りが二つ、殿方用とご婦人用が一つずつあった。
いずれも5~6人は十分に入れた。
大浴場はなかった。
一人っきりで静かに入りたい温泉なんてなかなかない。
私は貸切風呂がちょうど空いていたのでその風呂に入った。
仲居さんに教えられた通り、貸し切り中の札を入り口に掛けた。
ぬるま湯の湯に浸かって一人入る温泉の何て贅沢なことかと湯に浸かりながら思った。
ぬるま湯だったが、温泉から出ても、身体がぽかぽかと暖かくなり汗ばむようになった。
これが温泉の効果なのだろう。
夕食は豪勢なものはなかったけれど、お刺身や天ぷらなど和食の料理が並んだ。
老人には十分な量と質だった。
今回の旅行では常に食べる前に写真を撮ることを忘れて、食べ出してから写真を撮ることを思い出した。
箸をつけてからの写真はないだろうと今回は写真はホームページから拝借した。
明日のお昼はお寿司がいいと意見が一致した。
仲居さんに相談すると湯河原駅近くにあると聞いたので予約をお願いした。
今夜はみな話が弾み、ワインを赤白2本空け、生ビールをお代わりした。
部屋に帰っても幹事の部屋で2次会。
平均年齢77.8歳の高齢者は満足満足だった。
翌朝は6時過ぎに起床してウオーキングをする。
湯河原温泉街は、藤木川の両岸沿いに立ち並んでいる。
藤木側は水量多く、ゴーゴーと音を立てていた。
藤木川沿いに3,000歩ほど歩いた。
戻って、朝風呂に入る。
殿方用を覗くと誰も入っていなかったので殿方用を使った。
朝風呂も独り占め出来て、温泉気分をゆっくりと味わえ大満足だった。
朝食は午前8時と8時30分に分かれていた。
普通の宿であれば、旅立ちも早く、早いところでは食事時間は6時30分からがよくある。
それが午前8時からの設定は温泉本来の伝統を守っていると納得したのだった。
私たちは8時30分からを選び、昨夜の6人個室を使っての朝食となった。
最近は朝食バイキングが多いが、やはり湯治場での食事は和食中心の座敷に座ってお給仕していただく、落ち着きある朝食がうれしい。
朝食の品数は8品くらいあり、それぞれ、量的には沢山ではないが、ご飯一膳を頂いて、おかずを完食するとおなか一杯になった。
優しい味で美味しくいただいた。
チェックアウトは10時、荷物を宿に置かせていただいて、我々は湯河原町立美術館を訪ねた。
町制の自治体が運営する美術館は珍しい。
日本画家の平松礼二館の開設を機に、館名を町立湯河原美術館に改称しリニューアルオープンしたとあった。
誰かが「文芸春秋の表紙を飾っていた画家」と言ったので、思い出した。
昨年まで文芸春秋を定期購読していて見覚えがあった。
特別展は「高良眞木 まなざしの奥に」を開催していた。
高良眞木(こうらまき・女性)は初めて聞いた画家だったが、骨太なタッチの印象的な絵だった。
それから宿に戻り、荷物をいただき、宿の前からバスで湯河原駅に向かった。
乗客は観光客と路線の住民半々といったところで、立つ人もいてほぼ満員だった。
15分間隔で走っていて、廃止されるバス路線が多い中、頑張っているなと思った。
駅前にあると聞いたお寿司屋さんがなかなか見つからなかった。
探しているお店は湯河原駅の前を通る道路から設置されているエレベーターで10メートルくらい下に降りた道路を横切り、南に20メートル下がり角を右に回ったところにあったけれど、70歳までフルマラソンを走っていた弟がいなければ発見は不可能だった。
それにしてもこの2段道路の街並み風景にはびっくりした。
予約してもらった宿の仲居さんは簡単に言ってたけど、これは無理だと誰もが思った。
朝が遅く、皆、おなかがいいというので、特上を2つ、鉄火巻き2人前を頼んで、皆でつまんだ。
お味の方はまあ普通のお寿司屋さんの味、中瓶ビール3本を頼んだ。
小田原駅まで一緒に行き、姉たちは小田原城、弟は箱根、私たちは東京へと今回の姉弟旅行はここで解散した。
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