車のキーが、、、、、、。

 

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銀行の窓口で所用を済ませ、正面玄関に近い駐車場に留めたマイカーに向かった。

キーのボタンを押してロックを外し、ドアを開けた私は我が目を疑った。

 

確かに私の車のはずなのに、車内の光景は全く見知らぬものだった。

助手席の背もたれは大きく後ろに倒れていた。

読みかけの週刊誌が散らばり、缶コーヒーの空き缶や、コンビニ弁当の空き箱と思し

きものがその上に載っている。

灰皿には吸い殻が山のようだ。

私はタバコを吸わない。

 

ひと目見て他人の車だということが明らかだ。

でも、どうして。

私の頭の中で疑問符がグルグル舞った。

そしてその疑問はすぐに解けた。

私がドアを開けた車の隣に、本当の私の車が停まっていた。

 

私は自分の車だと思って、車種も色も全く同じ、他人の車のドアを開けてしまったの

だ。

 

でも、どうして。

 

私が手に持っているキーは確かに私のものだ。

娘が誕生プレゼントにくれたキーホルダーがついている。いくら車種や色が同じだか

らと言って、別の車のキーで開けることができるものだろうか。

私は一刻も早くこの場を立ち去ったほうがいいと思った。

しかし、過ちとは言え、他人の車のドアを開けてしまったのだ。

一言お詫びをすべきではないか。

また、他人のキーでドアが開いてしまったという事態について説明し、何らかの対策

を講じたほうがいいと、知らせるべきではないか。

それに、ドアが開いたままにしておいて、何かなくなっても困るし。

 

しかし、車の持ち主がどんな人かわからない。ドアを開けたことについて、難癖をつ

けられたらどうしよう。ここはやはり危険を避けるべきではないか。

 

迷った挙げ句、私はしばらく待ってみることにした。

ここは、空港の駐車場などではない。

銀行の用事が終われば持ち主はすぐに戻って来るだろう。

 

待つまでもなく、車の持ち主と思われる人物が銀行の玄関から現れた。

人の良さそうな、30代くらいのサラリーマン風。

 

 

車に近づいた男性に私は「すみません」と声をかけ、事情を説明した。

彼は私の車の方を見て、すぐに事態を理解したようだ。

「ああ」と微笑んだように見えた。

「でも、どうして私のキーで、お宅の車が開いたのか、、、。」

と言う私に向かって、

「俺、鍵かけてないから。別に取られて困るようなものは乗ってないので。」

 

「えーっつ、そうだったのか。」

 

私が開けたと思ったのは彼の車のキーではなかった。一台向こうの私の車を電子キー

で開けたのだった。

 

「じゃあ。」と片手をあげて、軽やかに彼は去って行った。

 

一人であれこれ悩んだ自分がバカみたいに思えたが、何事もなくて良かった。

 

それにしても、「車を離れる時はロックしましょう」などと時々警察の広報車が放送

しながら走っているが、ロックしないで車を離れる人なんているのだろうか、と思って

いた。

 

間違ってドアを開けられないとも限らない。

やはりロックしなければと思った。

 

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