面会交流って何?両親が離婚しても父母はそばにいてほしいと望む子供は多いと思う。その現実を垣間見た

ため池の一羽のシラサギ 何を考えているのだろう

60代の後半、家庭裁判所の家事調停委員を経験した。

家事調停は離婚調停が多いが、相続問題等もあった。

離婚にあたっては、協議離婚と調停離婚の2つの方法がある。

協議離婚は夫婦間で離婚の条件を決めて、双方が離婚届に判を押して、役所に提出すれば成立する。

調停離婚は家庭裁判所で決められた諸条件について、つまり親権(子供の養育に関する権限)や養育費、面会交流、慰謝料、財産分与や離婚成立までの生活費である婚姻費用分担などを裁判官や調停委員が当事者双方から話を聞きながら、問題解決を図る制度です。離婚する場合、当事者双方の合意による協議離婚以外では、必ず離婚調停を申し立て、調停の手続きを踏まないと離婚裁判を直接提訴することはできません。これを調停前置主義と言います。

 

私は調停の実務に携わって、この制度が素晴らしいと実感できた。

シレネの花が咲いた



面会交流は、離婚後又は別居中に子供を養育・看護していない方の親が子供と面会等を行うことについて、面会交流の回数、日時、場所など具体的な内容や方法などを話し合いで決める。大体月一回程度、子供を別れた父、又は母に会わせることをルール化するのだけれど、すんなり決まることは少なかった。

面会交流に関しては、昨年7月、卓球の福原愛さんが、前夫が養育している息子との台湾での面会交流の際に、勝手に息子を日本に連れ帰った事件があった。

福原さんの行動はまったくとんでもない行為であり、民事、刑事の法に基づく判断も福原さんに味方するはずもなく、結局、長男を前夫(江氏)に引き渡し

「これからは、江さんと協力して子供を育てて行きたいと思います」

と和解して決着した。

 

今、「共同親権」をめぐっての取り組みが進んでいる。

離婚後も父母双方が子供の親権を持つ「共同親権」の導入を柱とした民法の改正案が3月8日、国会に提出されたという記事を読んだ。

法施行前に離婚した夫婦も共同親権を選べるようにする。

成立すれば公布から2年以内に施行され、一方の親に限ってきた単独親権制度から転換されるとあった。

 

改正案は、協議離婚の場合、父母間の協議で共同親権とするか、どちらか一方の単独親権とするかを決める。

協議がまとまらない場合は、裁判所が親子の関係などを踏まえて判断する。

一方の親による虐待やDV(家庭内暴力)の恐れがあるなど、「子の利益」を害する場合には単独親権とする。

共同親権のもとでは、子供のことは父母が話し合って決める。

父母間の意見が折り合わない場合に限り、裁判所が判断するとあった。

 

フキノトウは食べる時を逃して、開いてしまった


さて、私が、久しぶりに面会交流のことを思い出したのは、過日、デパートで遭遇した異様な光景だった。

デパート6階の休憩広場を歩いていた。

4,5歳くらいの女の子が、金切り声をあげていた。

それも、何度も何度も繰り返していた。

欲しいものを買ってくれない母親に対しての不満だと思ったが、あまりにもしつこい母親への抗議に、はた迷惑も甚だしいとこちらも怒りを覚えた。

 

それにしても母親が大きな声を張り上げるでもなく、静かに対応していることが異様に感じられた。

少し落ち着いたら、「あなたも、よく我慢できるねえ」と声をかけようかとも思ったくらいだった。

母親と娘の周りでは小学1年生くらいの男児が行ったり来たりしていたが、妹と母親の間に入るでもなく、一人遊びのように歩き回っていた。

この男児の行動も少しちぐはぐ感を覚えた。

白いビオラ、寄せ植えに使う予定



私は用事があったので、その場から別会場に移動した。

それから買い物をして15分くらいたって再び広場に戻った。

その女児と母親はおなじ場所に立って、女児は前と同じように金切り声を繰り返していた。

カミさんがまだ用事をしていたので、私はその場所に立って眺め続けた。

しばらくすると祖母のような人が戻ってきたが、割って入るでもなく、そばの椅子に座った。

 

金切り声に耳を傾けると女児はどうも「お母さん、行かないで!」と言っているように聞こえた。

でも、その言葉の意味はまだ私にはわからなかったし、確実にそのように言っているのか、はっきりとは聞き取れなかった。

しばらくすると母親が少し離れたところの席に移動して、母子ともに向かい合って座った。

その席の隣のテーブル席で、カミさんがメモをとっていたので、私もその周辺に移動した。

金切り声は頻度が少なくなった。

近くで見ると、顔立ちの整った賢そうな女児だった。

母の顔をまっすぐに食い入るよう見つめて、母の言葉を聞いていた。

気に入ったおもちゃなどを買ってと駄々をこねていたのではないと確信した。

でも、時々、「お母さん行かないで!」と声をあげた。

 

母親が何を話しているのかは聞き取れなかった。

祖母と思われる人が席を移動してそばに座った。

代わりに母親が席を立った。

女児が「行かないでお母さん!」と声を上げて追うように立った時、祖母と思われる人が女児を抱きかかえた。

白い水仙



私たちはもう見ていられなくなってその場を離れた。

男児が広場の入り口のところにいた。

多分、母親と男児が一緒に帰るのだと思った。

私は胸が詰まった。

でも、どうしてあげようもない。

 

カミさんが「あれがあなたが言っていた面会交流じゃあないの」と言った。

多分、今日の母子の様子も面会交流の一形態なのだろうけれども、とても残酷な場面に遭遇した思いが残った。

今回の共同親権が機能して、すこしでも子供にとってよい方向に向かって欲しいと願わざるを得ない。

 

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