地方鉄道の路線廃止問題を考えてみた

山間の町をつなぐ芸備線の車両


今年に入り、JR西日本のローカル路線見直しのニュースが続いている。

見直しの俎上に上がっている路線の一つ、芸備線は私が生まれ育った東城町を通る鉄道だ。

広島市岡山県新見市の路線、安芸の国から備中の国を通るので芸備線というのだと思っていたが、今回調べてみると広島県内の備後の国の「備」に由来するとあった。

 

その芸備線区間の中で、特に広島県内の東城~備後落合間は収支率(費用に対する収入の割合)が0.4%で、100円を稼ぐために2万5416円かかるという。

JR西が公表した17区間30路線の中で最悪だという。

私も2019年11月に、高校の同窓会に参加した時に久しぶり利用したのみだ。

 

JR西によればこれまで採算路線の収益で、不採算路線を維持してきたが、引き続くコロナ禍による経営悪化の中、これまでのように不採算路線を維持していくことはできなくなっているという。

元々国有鉄道を民営化した時点で、こういうことが起こることは当然、想定の範囲だったはずであり、一民間企業に「収支だけで決めていいのか」と叫ぶ気には私はなれない。

ウォーキング中に雉を見かけた



もっとも、私は故郷を離れた人間であり、鉄道を失うことが住民にとってどういうことかと言われるとあまり語る資格はないのかもしれないが、記事の中で、住民の声として「芸備線は10年に1回ほど旅行で乗るだけ。利用が少なくなればなくなっても仕方がないのでは」とか「月に3回ほど通院で使う。列車がないと誰かに送り迎えを頼まないといけない」とか「一部廃止は仕方がないのではないか」と駅で待機するタクシー運転手の話や「バス通学になると定期代の負担が増えるので、このまま走り続けてほしい」という高校生の声を紹介しており、あればいいけれど、今のような状況ではなくなるのもやむを得ないという諦観した思いも伝わる。

 

政治家は「広島の他の線区で利益が出ていることを考えると、(芸備線の)赤字額はそれほど大きくない」と広島県知事が言い、岡山県知事は「できる限り、利便性を維持してもらいたい」と言い、鳥取県知事は「廃線を前提にした協議には乗れない」と言い、山口県知事は「区間ごとの数字で判断することなく、ネットワークを維持することをお考えいただきたい」と述べているとあったけれど、政治家の皆さん一様にとりあえずのポーズだけは示しておこうという姿勢だと思った。

 

中国地方ではすでに2018年に三江線廃線となっている。

三江線広島県三次市島根県江津市を結んでいた。

私の子供の頃は三江北線と三江南線に分かれていて、1975年に全線開通し三江線となったが、全線開通後43年で廃線になった訳で、税金の無駄遣いの典型とも言える。

雉の傍らには鷺が我関せずと立っていた



何よりも住民自体が鉄道を利用しなくなっていることは一日の平均乗車人数や収支率から明白であり、住民の声を伝える記事などからも住民自身もその問題性については気が付いていることがわかる。

存続に危機感を強めた沿線住民の会もできているようだけれど、冷静に現状を考えるべきだ。

地元市長は利用者増の促進を訴えていたが、とんだ見当違いとしか思えない。

一日往復3本程度の運行で、誰が考えても利用者は増えるはずもないし、過疎化の進行はとどまることを知らないのだ。

タピアンだろうか、紫のグラデーションが美しい



こうした中で、高速道路網の整備や国・県道路の整備も進んでおり、高速バス網、路線バス網、コミュニティバス網などバス網の利便性を上げ、JRからは廃線に伴うバス網充実化のための協力金(赤字額の10~20%程度?)を年限を切って提供してもらうなど現実的な課題解決に取り組むべきだと思う。

 

東城の高速バスは目的地までの途中下車はできないことになっている。

例えば東城バス停で大阪行きの高速バスに乗っても伯備線の拠点駅である新見駅では下車はできないということだ。

山口県知事の言う鉄道のネットワークではなく鉄道とバス網のネットワークができていないのだ。

もちろん今は東城~新見間の路線バスはない。

また、かってあった路線バスの多くの路線が廃止されており、自治体のコミュニティバス自治体の提供する乗合タクシーが中心になっており、バス網のネットワーク化も十分検討されているとはいいがたい。

鉄道を廃止するというならば、バス網の再構築と県域を越えた鉄道拠点駅とのネットワークなどを組み合わせて、どのような効率的で便利な仕組みができるのかを検討して住民に示すべきではないだろうかと強く思う。

 

そして、あと10年もすれば自動運転車が普及して、高齢者も免許返上せずに利用できるようになる日がくれば、過疎地の交通体系も大きく変革するのではないかと夢想した。

 

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