道路交通法改正 電動キックボードは今なぜ免許不要になったのか。


従来、電動キックボードはすべて原動機付自転車に分類され、原動機付自転車の免許を必要とし、最高速度は30キロでヘルメット着用は義務だった。

ところが今年7月1日に施行された改正道路交通法では、最高速度が20キロを超えず、大きさなどの要件を満たす車体を「特定小型原動機付自転車」と新たに分類し、16歳未満は運転禁止だが、16歳以上は運転免許不要となった。

ヘルメットは努力義務になり、車道左側や自転車レーンを通行すると決められた。

そして、最高時速6キロ以下に制御できる車体は自転車通行可の歩道や路側帯を走れることになった。

 

この記事を読んだとき、私は強い違和感を覚えた。

なぜ、今、電動キックボードの規制緩和をする必要があるのかということだ。

調べてみるとこの電動キックボードの規制緩和に関する改正道路交通法は令和4年4月19日参議院本会議で可決され、今年7月1日に施行されたのだった。

私としては、電動キックボードに関しては全く無関心で、道交法が改正され7月1日に施行されたことは新聞紙上で初めて知った。

マスコミもそれほど大きな扱いはなく、安全確保の課題を指摘してはいたが、改正への批判めいた記事は少なかった。

 

自転車や車いす、キックボードなど、もともとは人力で操作していた車両が、電動化の導入で、機械化による車両の免許の要不要や速度による取り扱いなど、従来型車両との区分の再整理が必要になったことは理解できる。

今朝一輪だけ咲いた我が家のむくげ



昔からよく見かけたのが、スズキセニアカーなどのいわゆるシニアカーだ。

免許不要をうたい文句に公道や歩道を走っているが、危なっかしくて、ひやひやもんだ。これらのシニアカーがなぜ免許不要で歩行者扱いされているのか、私はいまだにわからないでいる。

2輪や4輪の車にとっても、歩道の歩行者にとっても到底安心できない代物なのだ。

シニアカーは車でなくて、歩行者ですよ、従って公道は走ることはできないですと口ではいうというけれど、車輪のついた車両を歩行者と強弁しても、使用する人はデコボコとアップダウンの激しい歩道など使うはずもないのだ。

 

電動車いす(シニアカーもこの中に含まれる)の交通事故の死傷者数は確認できた限りでは平成23年~27年で古い記録だが、死者数は年間7人、負傷者数は184人とあった。

 

 

どうにも腑に落ちないこの規制緩和が気になって、どういう経過を経て、警察庁の有識者検討会の俎上に上り、報告書が発表されるに至ったのか調べてみた。

 

そもそもは令和3年6月18日、成長戦略実行計画において、電動キックボードの行動走行について

「最高速度等に応じた新たな車両区分の設定、走行場所、ヘルメットや免許の要否等、交通ルールに関する制度改正を検討し、その結果を踏まえ、本年度のできるだけ早期に、関連法案の提出を行う」と閣議決定された。

 

当時の首相は菅首相だった。

菅首相の在任期間は令和2年9月16日~令和3年10月4日という短命内閣だった。

菅首相は新しいこと、変えることが好きな首相だったと思う。

その主なものは、ふるさと納税制度の導入や学術会議メンバーの不承認問題、そして、この電動キックボードの制度改正に声をあげたことだ。

 

振り返ってみると菅さんは政策の王道を進むような仕事ではなく、重箱の隅を探してつつくような仕事が好きだったように思う。

そして、安倍政権の長きにわたる官房長官として、官僚人事に精通し、菅睨みされると官僚は震え上がった。

 

この電動キックボードにしても、誰かはわからないけど茶坊主の愛用者か利害関係者が耳打ちをして動き出したのだろう。

経済産業省では早速、令和3年度経済産業省委託事業として、国内外の電動キックボードに関する調査を委託して令和4年3月に報告書を受け取っている。

警察庁といえどもその動きは速かった。

警察庁は令和3年12月に電動キックボードを含めた「多様な交通主体の交通ルール等の在り方に関する有識者検討会」の報告書を発表したのだ。

それにしても、電動キックボードのことなど、どこのどなたが関心を持っていたのだろうと思わざるを得ない中で、だ。

中輪のひまわり 



弁護士ドットコムが令和4年7月に一般会員1380人を対象に実施した「電動キックボードに関する実態・意識調査」によると

①「電動キックボードを知っているか」という質問に92%の人が「はい」とした。

②「電動キックボードに乗ったことがありますか」と言う質問に対して「はい」と答えた人はわずか11.1%で、認知者と利用者の数に大きなギャップを生じている。

③電動キックボードを運転していて「危険を感じた瞬間がある」には60.8%が「はい」と回答している。

④「電動キックボードを利用したいと思うか」という質問に対してはと34.3%の人が「はい」と49.6%が「いいえ」と答えている。

⑤ 電動キックボードを「利用したくない」と回答した理由については

危ないから(71.4%)」と回答、

次に「そのほかの乗り物で事足りるから(63.8%)

「使い方やルールが分からないから(20.7%)」とあった。

ブラックベリー まだ赤い実と熟した黒い実



このように関心の薄い電動キックボードに関して、大抵の人ならこの狭い道路の多い我が国で、なぜ、今電動キックボードの規制緩和なのかと不思議に思うだろう。

長い歴史のある免許不要のシニアカーの多くの利用者が、禁止されている公道を走っている。

免許不要と制限をつけてみても、自転車はもともと軽車両として原則、車道の左側を走ることになっている。人力から電動化へと身近な車両が変化する中、一時しのぎの間に合わせで法令の整合性を図ってきたことが私の違和感に繋がっているような気がする。

自転車の交通事故が多発する中で、自転車の歩道走行が例外的に認められているに過ぎない。

そんなこともあって、今回の電動キックボードは最高速度が20キロを超えず、大きさなどの要件を満たす車体を「特定小型原動機付自転車」と新たに分類し、最高時速6キロ以下に制御できる車体は免許不要で、自転車通行可の歩道や路側帯を走れることになった。

ただ、最高時速6キロ以下に制御できる規定も利用者の法令順守義務にまかされているだろうから、この新しい、小回りの利く、便利さを売りにする電動キックボードの使用者の方々がそのような法令順守をする方ばかりとはとても考えられるはずもない。そうしたことはシニアカーの公道走行を見れば歴然としている。

 

人命を尊重し、安全性を重視するならば、免許不要などという規制緩和をするのではなく、少なくとも今回新設した「特定小型原動機付自転車」にあいまいにされてきた電動車両も区分し、免許制にして最低でも年1回の法令講習を義務付けさせるべきだと思う。

同時に、自転車専用レーン、「特定小型原動機付自転車」専用道などの整備を行い、こうした中で、電動車両の利用拡大を進めるべきではないだろうかという思いを強くした。

 

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