プロボクシングの強烈な印象は高校時代にテレビで見たカシアス・クレイ(試合後モハマド・アリに改名)と当時のWBA/WBC統一ヘビー級チャンピオン、ソニー・リストンとの試合だった。
「蝶のように舞い、蜂のように刺す」と形容されたクレイのボクシングスタイルにチャンピオンは圧倒され、見るものは興奮のるつぼだった。
6回TKO でクレイはヘビー級チャンピオンとなった。
以来、ファイティング原田や和島功一、ガッツ石松、具志堅用高あたりまでは、タイトル戦は必ず見るほど熱心だった。
何より、ボクシングは倒すか倒されるかの世界であり、これほどまでに命懸けの競技はない。
スポーツというにはあまりにも異次元の、剣士が真剣で渡り合うような世界に痺れてしまうのだ。
ただ、具志堅がタイトルを失ったあたりから、タイトル戦も横目で見る程度にしか記憶に残っていない。
他を圧倒するようなチャンピオンがいなくなったからかもしれない。
こうした中で久々にプロボクシング18戦18勝無敗の戦績で、今年のワールドボクシングスーパーシリーズ、バンタム級決勝に登場したのが、井上尚弥だった。
WBA/IBFチャンピオン井上尚弥と5階級制覇王者ノニト・ドネアの対戦だった。
その試合、2回にドネアの左フックで、井上は初めて右目上部を切って、出血した。
また、8回にも鼻から出血し、一進一退の展開となった。
しかし、井上は虎視眈々と狙っていた。
11回、井上の左ボディがドネアにヒットした。
テレビで見ていた感じでは、一連の流れの中でヒットした、素人目にはそれほど強い当たりとは思わなかったが、ドネアは一瞬動作が止まり、リングの中を歩くように退きながら、膝をついてダウンした。
歪んだ表情が井上の強烈なボディだったことを物語っていた。
レフリーのカウントはテンのところで瞬間停まったような間が空いたように思ったが、ドネアは何とか立ち上がった。
ドネアからも勝利にかける本物のプロ根性を見た。
そして判定は3対0で井上が勝利した。
世界王者同士の戦いは言葉では言い尽くせない、まさに死闘だった。
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