元横綱白鵬、モンゴル出身の第69代横綱は生涯成績1187勝247敗(122場所)、
幕内成績は1093勝199敗、(103場所)優勝45回、
横綱通算勝ち星は899勝と見事な成績を残した。
連勝記録こそ横綱双葉山の69連勝に及ばなかったものの、第2位の63連勝に迫った。本当に無敵の横綱だった。
色白の男前の横綱、横綱在位記録も84場所、14年間横綱として君臨した大横綱だった。
その大横綱が!
去る2月23日、新聞を開いてびっくりした。
報道によれば、日本相撲協会は、23日(2月)、弟子の暴力行為を知りながら報告を怠ったなどとして宮城野親方(元横綱白鵬)を委員から最下位の年寄りへ2階級降格と減俸処分とした。
処分は7段階に分かれ、降格は解雇、引退(退職)勧告に次いで3番目に重い。
協会によると、幕内北青鵬が同部屋の2力士に対し、顔への平手打ちや、殺虫剤のガスに引火させ炎を体に近づけるなどの暴行を2022年7月ごろから1年以上していた。
宮城野親方はこうした行為を知りながら、事情確認や協会への報告をしなかった。‥‥理事会後、報道陣の取材に応じた宮城野親方は
「弟子を守ることができなかった、その責任を重く受け止めております」と謝罪したとあった。
そして、北青鵬は引退勧告相当の懲戒処分とみなされたが、理事会前に引退届が出され、受理され引退となった。
私はこのニュースを読んで、あの鳥取事件を思い出した。
2017年10月25日鳥取市内の飲食店で、巡業中のモンゴル出身力士が集まって飲食中の出来事だった。
集まっていたのは横綱白鵬、横綱日馬富士、鶴竜、照ノ富士、貴ノ岩、石浦(鳥取市出身)と地元の高校の教師など10人ほどいたという。
ちょうど、横綱白鵬が話をしているときに、貴ノ岩が携帯を見ていて、それを注意した日馬富士の言葉に、貴ノ岩が反応せず、日馬富士が暴力に及んだという。
事件は、10月29日に貴乃花親方と貴ノ岩が鳥取県警に被害届を提出したが、相撲協会に事件の報告がなく、事件が公表されたのは九州場所3日目11月14日のことだった。貴ノ岩は初日から、日馬富士はこの日から休場した。
九州場所は横綱白鵬が優勝し、土俵下の優勝インタビューの時、万歳三唱をした白鵬の姿を私もしっかりと覚えている。
日馬富士は11月29日、事件の責任をとって引退を表明した。
さて、この事件で日馬富士の暴力に止めに入ったのは、当時の関脇照ノ富士で、照ノ富士も数回殴られ、最後に白鵬が割って入って止めたのだということを知った。
この二つの事件から見て取れる類似性について考えてみた。
まず、白鵬の相撲だ。
相撲道は品格を重視するというけれど、といっても勝負の世界である。
勝つことへの執念と品格を調和させるという禅問答のような課題をモンゴル出身の白鵬に求めるのはなかなか難しいような気がする。
ただ、白鵬が大横綱であればあるほどことほど、関係者やファンの勝手な思い込みをしてしまう。
横綱としてふさわしい対応、品格など当然ではないかと思ってしまうのだ。
白鵬自身は相撲界で尊敬する人物として69連勝の双葉山や32回優勝の大鵬を挙げているが、自身の相撲はかち上げや張り手、猫だましなどおよそ横綱が使う戦法でない取り口を多用し、特に晩年は勝利第一主義の相撲道を歩んで批判されることも多く見られた。
そういうところは、日本人とは違う血脈を感じてしまうのだ。
日馬富士の暴行事件でも、とっさに止めに入る気持ちがあり行動を起こせば、日馬富士の引退劇ということにはならなかったのだろうが、白鵬という人は、じっくり観察をして、最上の手や技を探そうとするのだ。
だから、彼の解説は面白い。
対戦する力士の実力を測り、技のキレ味を測り、展開を予想して見せる解説には説得力がある。
ただ、現実のとっさの行動は、展開を予想する前に事件が進んでしまい、結局傍観してしまうことになってしまうのだ。
少なくとも、照ノ富士の見せた行動が正しかったのだろうが、照ノ富士はまだ関脇である。
激高した横綱を抑えることができなかった。
そして、ようやく展開が見えたところで、白鵬が止めに入ったのだろうと思った。
北青鵬のやりたい放題について、ロールスロイスで場所入りした時には親方白鵬から厳しく注意されたという記事を読んだが、ただ幕内力士に育った北青鵬を甘やかせてしまった結果というほかない。
当初、北青鵬のいじめ問題について知らなかっと言ってしまったことについて、とかく協会首脳陣からは良く思われていなかった白鵬の日頃の言動に対して、この際とばかりに、弟子たちへの管理監督責任を強く問われた結果なのだと思う。
ただ、相撲協会も、モンゴル出身力士をスカウトすることに執心して来たのだ。
相撲道についてどれほどの教育をして、土俵上の真剣勝負や真面目に生きることの大切さを説いてきたのかと思う。
実際は大相撲はこれまで多くの関取衆の事件やスキャンダルを生んできたのだ。
そして、ほとんどすべての親方や執行部の役員たちは、そうした同時代のスキャンダルから首の皮一枚で切り抜けて来たのではないのかと言っても過言ではないと思う。
もっと抜本的な組織体制の見直しや、相談体制の在り方など検討する時期に来ているのではないかと相撲を愛する老人は思いを深くするのだ。
いずれにしても、モンゴルから来た大横綱白鵬には、尊敬する双葉山、大鵬のような心技体を習得し、慢心することのない本当に立派な親方として戻ってきてほしいと願うのだ。
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