学生や生活困窮者に対する貸付金の免除や減額制度の導入などの記事を何度か目にした。
アメリカではバイデン政権が学生ローンの借り手に対して、約4300万人の返済額を減免し、うち2千万人の借金を帳消しにしたとあった。
日本も例外でなく、多くの学生が奨学金制度を利用している。
国内の奨学金事業の9割を担う日本学生支援機構によると、20年度末現在で奨学金の総貸与残高は約9兆5900億円。
借りているのは約616万人と新聞記事にあった。
私も学生時代、奨学金を利用して大学を卒業した。
奨学金があったからこそ、何とか卒業できた。
本当に感謝の気持ちは尽きない。
我々の時代の奨学金は大きく分けて、無利子の貸与型奨学金と試験選抜による特別奨学金制度があった。
貸与型一般奨学金は月額3000円、特別奨学金は自宅生が月額5千円、自宅外生が8千円だったと記憶している。
そして、一定期間教育職に就くと奨学金は返還免除された。
特別奨学金は基本の3000円は無利子貸与であり、教育職に就く場合以外は返還しなければならないが、特別分については返還が免除された。
こうした奨学金制度のお陰で困窮家庭の多くの学生が大学を卒業し、社会へはばたくことができたのだった。
その後、奨学金制度は、1984年に有利子貸与制度が導入された。
さらに、1999年に有利子制度の貸与基準を引き下げるとともに貸与人数の拡大を図る制度改革が行われた。
その後も制度改革がたびたび行われ、現行では第1種奨学金(無利子、貸与月額自宅20000円~54000円自宅外20000円~64000円)、第2種奨学金(有利子、貸与月額2万円~12万円、増額の場合もある)など複雑多岐に分かれている。
様々なケースに対応しようとするサービス精神旺盛な奨学金制度になっているのだなあと感心した。
けれども、利用しやすくはなったけれども、貸付額が拡大され、卒業後から始まる返済に苦しんでいる多くのケースがある。
こうした中、私たちの時代にあった返還免除制度は1998年教育職就職者への返還免除の廃止、2004年研究職への免除制度の廃止へとつながって行った。
朝日新聞で紹介されていたケースでは、所得制限収入基準の厳しい給付型の奨学金は受けられず、貸与型で進学する人が多い。
都内に住む国立大学2年の男子学生は月12万円の貸与型奨学金を受けている。
学費も生活費も奨学金で賄っている。
4年で約600万円の借金を抱えることになると紹介していた。
こうしてみてくると1980年代から2000年代に続く長期経済不況の中で、第2次臨時行政調査会(第二臨調)の掲げる一環として行財政改革の推進やバブル崩壊(1991年~1993年)、さらに1990年代後半から2000年代の景気の悪化、失業の増加や就職難などもあいまって、奨学金制度改革が進められていったのだろう。
ただ、あらゆる分野における構造的問題による抜本的な問題解決は進まず、日本国は類を見ない、借金大国となった。
何しろ国の借金は2022年6月末で1255兆1932億円という巨額だ。
国民一人当たり1000万円を超える。
こうしたことは、高校や大学、専門学校などの奨学金制度に限らず、司法修習制度でも導入されていた。
司法試験に合格し、裁判官や検察官、弁護士に就くための研修期間中の司法修習生の給与(給費制)も2011年に廃止された。
給費制が廃止となり多くの司法修習生が給与の貸与制を利用したが、月額18万円~28万円の貸与を受け、学生時代の奨学金と合わせると総額1000万円以上の借金を抱えたという話を何人もの修習生や弁護士から聞いたことがあった。国も借金経営なのだから、国民も貸付制度を利用するのは当たり前だと官僚の考えそうなことだ。
流石にこの問題は大変な問題となり、2017年に給費制が復活したが、現行の給付額は月額135000円とあった。
実は2011年以前に支払われていた給付額は月額204200円だったというから、復活はしたけれど結局は、歳出削減は成功したのだった。
そして、今回の新型コロナウイルスの影響で困窮した世帯に国が無利子・保証人なしで金を貸した「特例貸付」だ。
返済できずに免除を求める申請が、判定の締め切りを今年度中に迎える貸付総数の3割超の79万1千件余りに上ると10月28日付の記事にあった。
このうち約31万5千件で免除が決定したとあった。
特別貸付は2020年3月に始まった。
従来の困窮者向けの貸付より迅速にお金を届けるため、収入が減ったことが分かる書類の提出のみで貸付を実施した。
一時は最大200万円まで借りることができた。
受付は今年9月末で終わり、貸付総数約350万件、総額は1兆4268億円となっている。
この返済が来年1月から始まる。
政府はこれまで返済の開始時期を延ばしてきたが同月以降、借り入れた人に対し貸付時期に応じて順次、返済を求めていく。
ただ返済が苦しい人は返済が免除されるという。
しかし、こうした生活困窮者への貸付金は元々貸付ではなく、給付金や支援金でよかったのではないかと私は思う。
現場では、貸付金のほとんどは返済されないだろうと話している。
無利子・保証人なしという貸付条件からして答えは明々白々である。
ならば、ここは給付金や支援金で支援すると言う方が分かりやすく、潔いではないか。多分に官僚のきまりきった悪癖の制度設計なのだと思う。
若者や生活困窮者には、お金を貸付けて借金を抱えさせる施策を進める一方で、アベノマスクや期限切れワクチンの多発などの無駄遣い、さらに今、東京オリンピックの不透明なスポンサー契約を巡って捜査が進められているが、世界第2位の借金大国がオリンピックに巨額なお金をつぎ込む必要があったのか。
国家運営の基本的な進め方がおかしすぎる。
ロシアのウクライナ侵攻から国家防衛の重要性が喚起される中、中国の台湾進攻による危機に備える必要があると軍事国防の強化が声高に叫ばれているけれど、軍拡競争にはまり込めば戦争の危機、戦争の不安が不安を呼び、とどまることができなくなる。
ここは冷静になって日本の出来る範囲、守ってきた範囲で国を守らざるを得ないではないかと老人は思う。
こういった状況に対して若者たちの怒りの声が聞こえてこないのが気になる。
若者たちはもっと積極的に、政治に関心を持ち、自分たちの世代がどの立ち位置にいるかを認識しなければならない。
そうすれば、おのずから怒りがこみあげてくるだろう。
もっともっと怒りを表現してください。
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