この度の安倍政権下の放送法をめぐる行政文書の公開から見えた魑魅魍魎の世界は、まさに天網恢恢疎にして漏らさずという言葉を思い出した。
難しい言葉を使ってしまったが、「魑魅魍魎」を辞書で引くと「いろいろな種類の妖怪や化け物。
また比ゆ的に、表にはっきりと姿は現さないが、私利私欲のために暗躍するもののたとえ」とあった。
「天網恢恢疎にして漏らさず」とは「天の神が地に張り巡らした網は、ゆったりして粗いようであるが、決して漏らすことはなく、それに搦め捕られる。すなわち、悪事を行えば、一時的には逃げおおせるなどうまくいったように見えるが、結局は、とらえられる乃至その報いを受ける」と書いてあった。
何だか安倍政権のやりたい放題とその結末をドンピシャ言い当てているようで気持ちが悪いくらいだ。
3月8日付朝日新聞は立憲民主党の小西洋之参議院議員が総務省職員から受け取った文書については、総務省が正式な行政文書と認め、「放送法文書 総務省が作成」とし「総務省は7日、放送法の政治的公平性をめぐる首相官邸側と総務省側の安倍政権下のやり取りを記したA4計約80枚の内部資料について、すべて同省の行政文書と認め、公開した」と報じた。
この総務省が認めた行政文書に対して、高市早苗経済安全保障担当相(元総務相)は「捏造」だと最も強い言葉で否定し、文書が「捏造」でなかった場合は議員辞職も辞さない考えを示したのだから一躍、時の人となった。
でもこの言葉はどこかで聞いた記憶があった。
そう、安倍元首相が森友問題で「私や妻が関係していたことになれば首相も国会議員もやめる」と関与を否定した。
また、財務省近畿財務局の職員だった赤木俊夫さんが公文書の改ざんを強要されたためとして自死し、最終的に財務省は改ざんの事実を認めたのだった。
従って、改ざんがあれば、捏造だってあるかもしれないと思いながら、しかし総務省は情報公開の本家本元、それはないだろうと情報公開制度の主務官庁としての責任と誇りを一方で、信じたいと思うのだ。
総務省が正式な行政文書と認めた文書は、法務省のホームページに掲載し
ここ000866745.pdf (soumu.go.jp)から誰でも、いつでも閲覧できる。
情報公開制度についてもホームページ上で「行政機関の保有する情報公開に関する法律」(平成13年4月1日施行)は国民に対し政府の説明責任を全うする観点から、行政機関及び独立行政法人等が保有する文書についての開示・請求権等定めており、国民に開かれた行政の実現を図るために重要な法律です。
と説明している。
ということで、岸田政権はとりあえず情報公開を急いだものと思われ、森友問題を抱えた財務省とはひと味ちがった。
早速、総務省のホームページを開き、行政文書の公開で検索すると令和5年3月7日付「政治的公平に関する文書の公開について」という一文が出てくる。
その文中の指示された箇所を検索すると今回公開された文書A4、78ページ分が出てくる。
総務省が正式な行政文書として認めた冒頭の文書は「政治的公平」に関する放送法の解釈について(礒崎補佐官関連)『厳重取扱注意』が目を引く。
日時、場所、出席者が記されている。
こうしたレクは平成26年11月28日から平成27年1月22日まで5回開かれ、高市大臣レクをはさんで4回続いているからそのご執心ぶりがわかる。
礒崎補佐官の要旨は
①一つの番組では見ない、全体で見るというが、全体で見るときの基準が不明確ではないかということ。
②一つの番組でも明らかにおかしい場合があるのではないかということ。
の2点を挙げ、2~3日にとは言わないが、選挙後にでも考えを聞かせてほしいと比較的柔らかな表現だ。
しかし、補佐官の際どい切り込みも記録されている。
例えば平成26年12月25日レクメモには補佐官の発言として
〇(極端な事例として挙げられている)「総合的な検証をも要さない事例」では答えになっていない。
これでは抽象的過ぎて分からない。
もっと(補佐官の)意に沿ったものを持って来てほしい。
ここで抵抗しても何のためにもならない。
〇この部分は昭和39年の答弁以来明確にせずに(逃げて)来た部分なんだろうが、極端な事例はあることくらいは認めるべきだろうと恫喝的だ。
総務省2月13日付文書「高市大臣レク結果(政治的公平について)」
は平成27年2月13日(金)15:45~16:00に行われた。
A4一枚にまとめられているが、省内での比較的穏やかなレクの雰囲気が伝わってくる。
レクの模様をA4、1枚にまとめたこのような見事なレクメモは初めて見た。
地方公務員でいたころ、官僚出身の市長がよく一枚にまとめろと言っていたことを思い出した。
高市大臣の「テレビ朝日に公平な番組なんてある?」という発言など省内での大臣レクにおける本音が出ているみたいで、とても「捏造」したという風には受け取れないのだが。(続く)
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