岸田政権の原発政策を問う

 

3月11日、あの東日本大震災から12年目を迎えた。

本当に月日のたつのは早いものである。

それでも未だに避難者は3万1千人に上るという。

その9割は福島第一原発事故が発生した福島県の避難者である。

いかに、原発の持つ重大性が内在していたかがわかったはずなのだが、一方で喉元過ぎれば熱さ忘れるという喩えが教えてくれるように、国民の意識から原発事故の教訓は忘れ去られつつあるように思う。

 

東日本大震災が発生した時の菅直人元首相や、自民党をぶっ壊すと一時代を築いた小泉元首相がそろって日比谷公園での集会に参加し、原発の危険性を訴えたというニュースもあったが、「去る者は日日に疎し」か、かっての神通力はなさそうだ。

 

乙女椿


先月18,19日に実施した朝日新聞全国世論調査(電話)結果が発表された。

それによると原発再稼働について、「賛成」51%  「反対」42% で、東京電力福島第一原発の事故後、初めて「賛成」が過半数になったとあった。

原発の再稼働に対する賛否は東日本大震災のあと、おおむね賛成が3割前後、反対が5~6割で推移したとある。

 

昨年の調査で賛成38%、反対47%と差が縮まり、今回初めて賛成が反対を上回った。

今回の調査で政策転換の柱である新規建設のうち、原発の「建て替えを進める」ことへの方針転換の賛否を聞くと、賛成45%、反対46%と拮抗した。

 

光熱費の値上がりによる生活への負担感を聞くと、「負担を感じる」が81%、「それほどでもない」は18%だった。

 

このところの光熱費の高騰は異常である。

2021年4月と2022年10月を比較すると「3倍近く」の価格に高騰している。

 

そして、政府はこの事態を利用してといっても言い過ぎではないと思うが、原子力発電所の再稼働に向けて前のめりになっている。

まず、2022年9月26日、原子力規制委員会のメンバーを交代させた。

前任者の更田委員長と4人の委員である2012年の制度発足以来のメンバー全員が交代した。

 

今年2月26日の朝日新聞社説によると、原子力規制委員会が60年を超えた原発の運転を可能にする新制度を認めた。

政府の方針転換に足並みをそろえた性急な決定で、独立性が疑われかねない。

原発事故の教訓を学んで生まれた規制機関として、存在意義の根幹が揺らぐ事態だ。

記者会見で進め方を問われた山中伸介委員長は、「法案提出というデッドラインは、決められた締め切りでやむを得ない」と説明した。

驚くべき発言だ。

原発復権を急ぐ経済産業省が主導する日程を優先し、規制委の議論を尽くさないのであれば「推進と規制の分離」は絵に描いた餅に終わる。

と、社説は問題点を指摘した。

 

この原子力発電所の60年超の運転容認の規制委員会の議論について、5人の委員のうち1人が「安全側への改編とは言えない」として反対したが、議論が予定の1時間を超え、委員長は「根本が食い違ってしまった」と多数決を実施したという。

馬酔木



しかし、ちょっと待ってほしい。

東日本大震災が発生し、福島第一原発が大爆発を起こし、12年目を迎えた今でも3万人以上の避難者がいる現実があるのだ。

規制委員会の組織理念には「福島原子力発電所の教訓に学び、二度とこのようこのような事故を起こさないために、そして我が国の原子力規制組織に対する国内外の信頼回復を図り、国民の安全を最優先に、原子力の安全管理を立て直し、真の安全文化を確立すべく、設置された」と書かれている。

ところが、1時間の議論で多数決で決めるとは国民の安全を最優先にという言葉が泣いている。

 

それでは今一度問題点を整理してみよう。

まず、原子力発電の何が問題なのだろう。

その一つは、原子力発電には絶対の安全性が前提となるが、そのことは究極、最悪の危険物だということが言える。

そのため、人為的な事故や偶発的な事故、自然災害による事故やテロや戦争での標的にされる場合などにおいて、車社会の車の安全性や飛行機事故の安全性、新幹線の安全性などと同列に論じられる安全性ではないことは当然のことだ。

 

いわゆる原発の安全性は究極の安全性でなければならないと私は考える。

そうした観点から言えば、この狭い日本に原発の適地などありはしないのだ。

もしどうしても推進したいのであれば、東京都や大阪府や愛知県にも率先して原子力発電所を作って、安全であり危険性はないことを国民に説明すべきではないか。

国民もさらに原発再稼働を進めるべきだというなら、その決意をもって「賛成」を示すべきだと私は思う。

 

二つ目は原子力発電所から排出される高レベル放射性廃棄物(核のゴミ)は安全になるまで10万年かかるという。

10万年先の安全性を担保するような議論こそ無責任極まりないことだと私は思う。

この廃棄物の処分場予定地として、北海道や鹿児島県の弱小自治体が補助金目当てに手を挙げているけれど、このような実態を為政者は正しい目をもって眺めてほしいと思う。

そして、今、政府が前のめりになって進めようとしている原子力政策が安定電源、脱炭素化として一定の成果を発揮するのは10年以上先のことであり、現状起きている電気料金の高騰の解決策にはならないということを説明すべきなのだ。(続く)

 

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