朝日新聞によれば、ロシアのプーチン大統領は6月30日、ウクライナ侵攻をめぐり対ロ制裁を強める日本への対抗措置として、日本の商社が出資するロシア極東の液化天然ガス(LNG)・石油開発事業「サハリン2」の運営を、新たに設立するロシア企業に譲渡するよう命令する大統領令に署名した。
日本側が事業の権益を失う恐れが出てきた。
サハリン2で生産するLNGの約6割は日本向けとされ、日本のエネルギー戦略にも大きな影響を与える可能性があるとあった。
ロシアのウクライナ侵攻に対して、対ロ制裁に参加している日本に対する対抗措置としては、ロシアとしての当然の反応だろうし、ウクライナに対する暴虐ぶりをみると、北方領土と同じようにロシア側に接収されてしまうことは容易に想像できることだ。
岸田首相のコメントは
「すぐにLNGが止まるものではないと考えている。大統領令に基づき、この契約内容が、どのようなものを求められることになるのか注視しなければならない。事業者ともしっかり意思疎通を図って対応を考えなければならない。」ということだが、何か、緊張感に欠け他人事のように伝わる。
そもそも国家を支える根幹となるエネルギー源をロシアに頼ろうとする発想こそ、ノー天気過ぎるのではないか。
日本がロシアに依存する液化天然ガス(LNG)は8.8%、原油は3.6%という。
2020年度電源別発電電力量の構成は①天然ガス(39.0%)②石炭火力(31.0%)③再生可能エネルギー(19.8%)④石油火力(6.3%)⑤原子力(3.9%)であり、天然ガスと石炭火力が主力を占めていることになるが、石炭火力は脱炭素化を進める上では、火力発電の休廃止を進めざるを得ない事情がある。
天然ガスや石油は100%輸入に頼らざるを得ない弱小資源国家の日本にとって、まったく自由意思で決めることはできない。相手次第の分野であり、その状況に身を任せほとんど手をこまねいてきた国家運営こそが大問題だったと言わざるを得ないだろう。
東日本大震災前の2010年度の電源別発電量の割合は、液化天然ガス(29%)、石炭(28%)、原子力(25%)、石油等(9%)、水力(7%)、再生可能エネルギー(2%)となっており、原子力の占める位置が大きくなっていたことが分かる。
福島原発事故が起こるまで原子力発電所には安全・クリーン神話が常識だったような気がする。
私自身、昭和60年代、四国地方を旅行した時、愛媛県の伊方原発を外から眺めた。
白亜の建物がまぶしかったし、原子力発電所の危険性など微塵も持たなかったし、むしろ見た目のクリーンさに感心したことを覚えている。
母がよく原子力発電所の見学に町内会や老人会の旅行で行ったことを、信頼感たっぷりの口調で話してくれたことを思い出す。
平和を演出する白を基調にして、見学経費も無料でお土産付き、クリーンと安全性を強調して国民を信用させていたのだった。
当時、その危険性については多分、大半の国民はほとんど考えもしなかったと思う。
それが、あの福島原発の大惨事で見事に天下に知らしめさせたのだった。
ただ、原子力発電の利用について先日、大手機械メーカーで技術畑を歩いた友人と話をしたとき、彼が原子力発電所の安全性に全く疑問を持っていないことに驚かされた。
友人は「福島原発事故はほとんどありえないことが起こったのだ。あんなことは二度とありえない」と断言した。
しかしテロもあり、地震も噴火もある、起こらないと思っていたことが起こったのだ。
そして事故が起こってしまえばこれほど厄介なものはないではないか。
福島原発があの程度で済んだのも不幸中の幸い。神風が吹いたとしか私には思えない。
今回もロシアはウクライナの原発を攻撃をしたではないかと口論になりかけた。
素人が怒鳴りあっても意味ないので矛を収めたが、今だに原発再稼働を期待している国民や政治家が結構大勢存在することについて、理解できない。
こうした中、原子力規制委員会の極めて厳しい審査体制の中で、原発の再稼働や新設が困難になっていることもあり、原子力発電を主力電源に据えるという主張は現実的でないことは明白だと思うのだ。
ということからすれば、日本のエネルギー政策の取るべき道は再生可能エネルギーの最大限の活用しかないではないかと思ってしまう。
なぜ、石油や天然ガス資源のない日本が、ふんだんにある太陽光発電や風力発電、地熱発電、バイオマス発電、揚水発電などありとあらゆる、再生可能のエネルギー発電に総力をあげないのかと地団太踏みたくなる。
確かにそれぞれ課題は指摘されている。
例えば、太陽光は天候に左右される。
晴天で太陽光の発電量が増えると電気を使いきれなくなり出力制御(太陽光や風力発電を一時的に止めること)の事態に追い込まれる。
電気は使用量(需要)と発電量を(供給)一致させる必要があり、このバランスが崩れると大規模停電の恐れが出るのだと解説されていた。
逆に、悪天候で発電量が大きく落ち込むと今度は「電力不足」になり、バランスが崩れ、大規模停電を招くといい、多様な電源構成の調整が難しいようだ。
政府は2021年に今後の電源構成について、再生可能エネルギーの割合を第一位の36~40%にすると位置付けたが、真に自前の自立的電源の確保を目指すのであれば、まだまだ、覚悟の定まらない目標値だと言わざるを得ないと思ってしまう。
太陽光発電を無駄にしないためには巨大な蓄電池や効率の良い小型蓄電池の開発に全力を挙げて取り組むのだ。
東京都は建物を新築するときには原則として太陽光発電パネルを取り付けることを義務化する方針という。
また、大手電力会社の管轄エリア間で電気を融通しあう連係線(送電網)の強化も指摘されてはいるが、なかなか進んでいないという。
さらに、川の上部と下部のダムを組み合わせて、電力が余っているときに上部のダムに水をくみ上げ、必要な時に放流して発電するという揚水発電も注目されている。
供給力を調整する巨大な「蓄電池」のような役割を果たすのだという。
風力発電も海に囲まれた日本が利用しない手はない。
地熱発電も火山国日本にとって、利用価値を埋もれさせて置く手はないではないか。
最優先順位を再生可能エネルギーに据え、知恵を出し、産学官の技術力と実行力で必ず、100%自前の資源再生可能エネルギー活用体制を生み出せると確信する。
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