この季節、広島県山間部のわが故郷では、山蕗の煮物を大量に作り常備菜として賞味する。
スーパーなどに出回る立派な栽培蕗に比べて、細く華奢な蕗は野趣に富み実にうまい。
山野に自生する蕗を採取に行った覚えはないので、多分この時期だけ八百屋に出回ったのだろう。
子供が喜ぶ味ではないので、おとなになってから、故郷に帰省しておふくろの味として認識したのだろう。
その味を再現したいと思ったが、まずヤマブキが入手できない。
そのうち、1年に一度生協の宅配のカタログにヤマブキが掲載されることを知って、それを利用するようになった。
さらに近くの産直市場にも季節になると細い野生に近い蕗が出回る。
そして、我が家の裏庭にかみさんが実家から移し植えた蕗が細々と育っていたが、それを表庭に移し植えて、自家製堆肥をたっぷり与えたところ、細くて柔らかい山蕗に近いものが収穫できるようになった。
これを煮干しと、出し昆布、日本酒、醤油で時間をかけて煮ると、おふくろの味に近い蕗の煮物ができた。
何と言っても、素材の新鮮さではこれ以上のものはない。
美味しい、美味しいと舌つづみを打ってはいたが、実は一つだけ不満があった。
おふくろの蕗は、キャラブキのように黒々と光っていたのだが、その色が出ない。
醤油をたくさん入れるといいのかと思ったが、それでは塩辛くなりすぎる。
あの色を出すにはどうすればいいのか、尋ねようにももうおふくろはいない。
ある時、故郷の山蕗は鉄鍋で煮ていたことを思い出した。
鍋の鉄分が作用してあの色が出ていたのだ。
といっても手元に鉄鍋はないので、黒豆の色出しに使う鯛の形のキッチンツールを使って見たところが大当たり。
煮るほどに黒い色が出てきて、イメージ通りの煮物になった。
そして、風味も加わった。
今年も蕗の煮物を楽しみ、第一弾はほとんど食べ尽くした。
そろそろ庭の蕗を取り入れて第二弾を作ろうと計画中。
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kyarabukino