国家の大罪

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鶏頭の燃えるような赤が秋を告げている

ハンセン病患者家族補償の政府決定の新聞記事を読みながら、明治以降日本に近代国家が成立して以来、国家によるミスリード政策はどれほどあったのだろうかとの思いが頭をもたげた。

 

もとより浅学非才、誰もがご存知のことを文章にまとめただけではあるが、国家の権力を行使して行われたことが、内閣人事の任命責任の謝罪のように口先だけで、軽くすまされては困るのだ。

 

そうしてみると、あの太平洋戦争に踏み切り、日本国を亡国の瀬戸際までミスリードした東条英機など、戦争指導者の絞首刑という判決は連合軍側の、勝ち組の判決であったとしても、死を持って償わざるを得ない当然の帰結のような気がする。

 

ただ、太平洋の島々、アジア諸国での玉砕戦や満州棄民、広島、長崎の原爆や日本各地での無差別空襲による死などなど、責任者にいくら死んで償ってもらってもどうなるものでもないではないか。

国家による政策のミス決定と執行は万死などではない、国家大罪として重大な責任を伴うのだ。

 

2つ目は、今回のハンセン病の問題である。

ハンセン病は私たちの子供のころは、らい病と呼び恐れられていたが、私たちのころには、日常生活では実際にはほとんど知る機会はなかった。

いや、知らされていなかったのだと思う。

それほどに厳重に国家管理されていたともいえる。

 

しかしながら、らい菌の感染力は大変弱く、また特効薬のプロミンは1943年にアメリカで製薬されて1950年代には商品化され(薬名ダプソン)世界中で使われていたという。

そうした中で、我が国はらい患者の隔離政策を続けてきたのだ。

 

岡山県には、国立の長島愛生園と邑久光明園の2施設がある。

しかし、隔離施設の中では、すさまじい人権蹂躙の管理が行われた。

例えば、施設への強制収容では警官がピストルを突き付けて送り込んだという。

また収容された施設では、医療従事者も少なく、患者が患者の世話をし、注射などの医療行為も患者自らに行わせていたという。

 

そして収容者同士の結婚では男性は断種を強制され、子供ができてしまった場合は子供を堕胎させられたという。

 

1996年、ようやく「らい予防法」が廃止された。

こうした歴史経過の中で、1998年(平成10年)7月らい予防法違憲国家賠償請求訴訟が熊本地裁に提訴され、2001年5月原告全面勝訴の判決が下された。

これを受けて当時の小泉首相が控訴を断念して、政府による謝罪を発表したのだった。

 

無念にも倒れて逝った多くの患者の皆さんに、何を持って償えばいいのか。

ただ、ただ政府の言うことを真に受けて、知らぬ顔の半兵衛を決め込んでいた自分自身を恥じる。

 

お金で解決することは患者さんの本意ではなかったのかも知れない。

というのは、この国家賠償請求訴訟判決に基づいて成立した「ハンセン病療養所入所者等に対する補償金の支給に関する法律」では生存者には入所時期により800万円から1400万円までの4段階で補償金が支払われることになったとあるが、これだけの人権蹂躙と差別と偏見と恥辱を受けてきた代償に対して、あまりにも低すぎる補償額だと思ったからだ。

 

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家族補償を報じる記事

今回の家族補償での補償額は一人当たり最大180万円と記事にはあった。

今、さかんに広報しているC型肝炎給付金は最高額4000万円である。

時代が違うとはいえ、国家の個人に対する犯罪的政策ミスがこんなものでいいのかと思わざるを得ないのだった。

 

三つ目は原子力発電所の安全性である。

 

もう30年も前に愛媛県伊方原子力発電所に行った。

見学に行ったのではない。

ただ、旅の道中に建物施設を外から眺めたに過ぎないが、不安などこれぽっちもなかった。白亜の建物群がまぶしかった。

 

当時、私の母は婦人会や町内会で何度も原発を見学していた。

旅費もお土産もみんなあちら持ちだと言っていた。

 

多分、東日本大震災が起きるまでは、国や電力会社挙げての安全神話を国民のほとんどは毫も疑っていなかったのだ。

 

震災後、除染が続く中、10年近く経って、少しずつ帰郷が進められているが、もはや原発の危険を知った住民は簡単には帰れないのだ。

それにしても、この問題でも国は真っ赤な嘘をついていたのだった。

原発には国家が滅ぶ危険性があることをまず国民に語らなければならなかったのだ。

 

国家は時として真実を隠ぺいしたままに重大な政策決定を行うことや弱者には強権を持って圧倒してくるということをしっかりと肝に銘じなくてはならないと思う。

 そして、こうしたことが究極、国や国民を破局の淵に追い込む国家の大罪となるのだと確信する。

 

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